「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか」という本を読んで、技術向上に関することを最近書いてます。
前回までの内容は、「適切な努力を積み重ねれば一流になれる」というような内容で、「頑張れば夢は叶う」的な内容だったかもしれません。
今回はある意味それを打ち砕く内容になるかも。
今まで話してきた内容って、「チェス」や「音楽」だったりして、人間本来の身体構造に大きな影響を受けにくい、練習することが実力に直結しやすかった種目といえます。
それに対して今回は「走り高跳び」についてです。
思いっきり身体構造が影響しそうな競技ですよね。
【突如現れた天才】
走り高跳びはジャンプ力っていう身体能力が必須ではありますが、助走や踏切、空中姿勢など、技術面もありますよね。
だから何年も血の滲む努力をした選手は美しく高く飛びます。
だから努力は無駄にならないと思います。
でもこういう競技には遺伝子に恵まれた天才がいたりします。
バハマ代表のドナルド・トーマスさんっていう選手がいるんですが、トーマスさんは大学時代にバスケ部だったけど、遊びで高跳びを跳んでみたら、ものすごい高さを跳んだので、高跳びの選手にスカウトされました。
その後1年ちょっとの練習で(しかも結構サボってたらしい)世界陸上で金メダルを取るという偉業を成し遂げます。
他のトップ選手たちは、幼少から10年以上膨大な努力を費やしてきて、極限まで高めた技術で戦っていた中、トーマスさんはほぼ生まれ持っての才能のみで世界一になったわけです。
【シンプルだからこその天才】
これと同じストーリーは、クラシック音楽の世界で起きることは多分ないんじゃないかなって思います。
なぜなら複雑で、直感だけではできない種目は、練習量が絶対的に必要ですからね。
でも走り高跳びはある程度シンプルな競技です。
身長が高いことと、高くジャンプできること、この二つが最重要。
トーマスさんは身長が190cmあって、ジャンプ力が最初からすごい。
ジャンプ力に関してはアキレス腱の強さと長さが重要なんですけど、かなり長いアキレス腱を持っていたらしく、これが天性のジャンパーを形作っていたようです。
身長が高くて重心が高い。
アキレス腱が長くてジャンプできる。
この二つを持って生まれたことで、何千、何万時間もの練習で積み上げた技術の結晶に勝ってしまう。
相当稀な事とは言え、すごい世界ですよね。
【伸びなかった天才】
あっという間に世界一になってしまったトーマスさんですけど、その後プロになって6年間、1センチも記録が伸びなかったと言います。
何もしなくて世界一の人がちゃんと練習したらすごいことになりそうなのに。
これが何でなのかはわかりませんが、不思議なものですね。
得意なことに出会えたのは幸せかもしれないけど、自分が向上していくところはほとんど感じられなかったんですよね。
トーマスさんは楽しかったのかな〜
ということで、分野によっては天才が確実に存在します。
最も覆しようがないのが身長だと思いますが、ジャンプ力、走る速さ、などのシンプルな能力も身体構造の才能が絡みやすいようですね。
その点ダンスは特定の才能が必要ではなく、いろんなやり方がある。
努力のしがいはある種目だよね。
No.1270